JSMS Committee on Plasticity Engineering |
塑性力学分科会
主査 佐久間 淳(京都工芸繊維大学繊維学系)
幹事 高木知弘(京都工芸繊維大学大学院工芸科学研究科)
日本材料学会の創立50周年を記念して開催されたシンポジウム”Materials Science for the 21th Century” (2001年5月:大阪大学)において,当部門委員会では以下のような世界的に著名な研究者に基調講演をお願いしました.題目(講演者)は,次のとおりです.
(1) ”Strain Gradient Plasticity Theory Revisited (Prof. J. W. Hutchinson, Harvard, USA)”
(2) ”Propagating Instabilities in Materials (Prof. S. Kyriakides, Texas Austin, USA)”
(3) ”Material Mechanics of Materials (Prof. G. A. Maugin, CNRS/Paris-VI, France)”
(4) ”Multi-axial Strength of Metallic Foams and Lattice Materials (Prof. N. A. Fleck, Cambridge, UK)”
(5) ”A Multiscale Model of Plasticity (Prof. H. M. Zbib, Washington S., USA)”
(6) ”Forming and Deforming Nano-grained Metals (Prof. W. Yang, Tsinghua, China)”
これらの課題は,この10年間の塑性力学の基礎研究において大きな流れを形成してきました.すなわち,(i) 細い材料や薄い材料の寸法依存性や超微細粒から成る多結晶体の特性研究,人工的な格子構造や泡構造を持つ材料の微視的な挙動と巨視的な応答の解析のような具体的に対象とする材料を絞ったモデル化や特性評価に関する研究です.一方,(ii) 材料不均質と欠陥の連続体力学的取扱い,結晶塑性学における階層構造性;原子・分子の運動と転位の力学さらには結晶塑性へつなぐアプローチなど普遍的な現象に関する基礎を与える理論や解析の研究です.いずれの研究も,材料内部の微視的な構造を考慮して巨視的なモデル化を行ったり,巨視的には単純な変形挙動の背後にある微視的機構を議論することで,空間的(あるいは時間的)スケールをつなぐ点に特長があります.
上記の課題は,この10年間で解決されたわけではありません.個々の課題は深化しており,一方で対象とする材料は,古典的な金属材料や土質・岩石材料から高分子・複合材料さらには生体材料などにも及んでいます.このことは,材料の非線形応答/非弾性変形に関する力学的取扱いの普遍性を表わしています.塑性力学あるいは連続体力学の基本的な枠組は完成されているものの,対象とする時間・空間に特定の現象をいかにしてモデル化していくか?いかに拡張してくか?には,様々な方法論があります.これからの10年間で,それらの共通性を見いだし,統一的な方法が構築されることを期待します.塑性力学の縦への深化と横への広がりのために,本学会の学術講演会ならびに材料工学連合講演会において,当分科会が中心となって今後も継続的にオーガナイズドセッションを企画していく予定です.
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